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読売ジャイアンツの阿部慎之助さんが、巨人軍の監督をやめた。
事の発端は、阿部さん自身が認めているように、18歳の娘に暴行し、警察に現行犯逮捕されたことにある。
ケガがなかったとはいえ、明らかに暴力事件だ。だから、警察は阿部さんを逮捕した。
もっとも、被害者の18歳の娘にとって、父親が逮捕されることを想定外だったようだ。
監督辞任の記者会見の際、18歳の娘は報道関係者向けに次のような文面を公表した。
この事件は、プロ野球だけでなく、社会の各方面で話題になった。
巨人ファンは、阿部慎之介の監督復帰を願ってネット署名を募集し、13万筆以上を集めた。
警察によるくわしい取り調べや起訴するかどうかもわからないうちに、監督復帰を望む声が先走ってしまったのだ。
もっとも、阿部さんがプロ野球に復帰する資格があるかどうかを問う報道も見られた。
『女性自身』という雑誌は5月29日付の記事で、球団OBの言葉として、阿部さんを「裸の王様」と指摘している。
「昨年オフには、二岡智宏1軍ヘッドコーチが球団の慰留を振り切って退団。阿部前監督の肝いりで呼ばれたにも関わらず、周囲には『我が強い阿部監督とはやってられない』と嘆いてユニフォームを脱いだともされます。
代役を探すにも、『阿部さんは自分の思い通りにならないと怒るから』と人選は難航しました。気に入らないことがあれば周囲を叱責する姿は選手、首脳陣、裏方を問わず皆“引き気味”でした。
球団納会ゴルフでは、阿部前監督を恐れて誰もチームを組みたがらず、まさかの“1人プレー”になりそうな始末でしたが、本人は最後まで気づいていません。まさに“裸の王様”だったのです」
『AERA』という雑誌の5月29日付の記事では、テレビ関係者の言葉として、次のように書いている。
こうした証言が正しいかどうかは、わからない。
しかし、阿部さん自身が出した監督辞任の意向を巨人軍のオーナーが同日すんなり受理し、引き止めなかったことを考えると、プロ野球界で暴力沙汰が絶対に許されない事案であることが印象づけられた。
阿部さん自身も、記者会見では「伝統ある巨人軍の監督の名を汚した」と謝罪した。
これを聞いて、僕が一番に不思議に思ったのは、謝罪する相手が巨人軍であったことだ。
ジャイアンツのブランドイメージを守るために、逮捕された男が監督を続けるわけにはいかないという謝罪なのだ。
阿部さんが真っ先に謝るべき相手は、巨人軍や世間ではなく、自分が暴行した娘ではなかったか?
18歳の娘には、「有名人の娘」という自覚が多少はあったのだろう。
だから匿名で児童相談所に相談したんだろうが、児童相談所は緊急性の高い事案だと判断したから、逮捕権を持つ警察に通報したのだろう。
もし阿部さん自身が娘に対して、「おまえは悪くない。おまえを暴行した父親の自分にすべての責任がある」と娘の前で土下座して謝罪していたなら、娘はチャットGPTに相談することもなかっただろう。
そこで、臨床心理士の信田さよ子さんのXでもポストに注目してほしい。
なぜか?
18歳の長女は、記者会見で公表した文章の中で今回の暴行事件について「親子ゲンカ」と書いていたからだ。
腕力も経済力も大きな差のある関係では、そもそもケンカにはならず、一方的な制裁あるいは支配の関係そのものになる。
阿部さんと娘の関係は、まさに支配する・支配される関係であった。
それは珍しいことではない。
日本の親子関係は基本的に支配関係だし、法律も親が子どもを支配することを容認してきた。
子どもがイヤがる仕事でも、親が認めた職業しか許可されないし、子どもがどんなに嫌がっても親は子どもを里子に出す権利がある。
子どもには、自分に関わることでも、自己決定する権利が与えられておらず、居場所も働く場所も学校も全部、親が許したところしか、子どもは選べない。
それが日本の法律として、今なお子どもを縛り付けているが、そうした法律を子どものために変えようとする大人は圧倒的少数派だ。
なのに、支配関係を娘が気づかないままだとしたら、娘は自分の父親が逮捕されたことや年収で数億円になる仕事を失ったことを、「子どもの自分のせいだ」と自分を責めてしまうんじゃないか?
だから、娘に対する心配を表明する人も一部に現れたのだろう。
といっても、娘は既に18歳で成人なので、マスコミに追われたくなければ、家族と別居して生活すればいいし、それぐらいの金は十分にあるだろう。
むしろ心配すべきは、今回の報道によって、親から傷つけられている未成年の子たちが、「児童相談所に相談すると親が逮捕されてしまうのか!」と189通報をためらってしまうことだ。
親に傷つけられている子どもは、学校や友達によって、児童相談所に通報されることを恐れてしまうかもしれない。
「親がもし逮捕されたら、生活できなくなるし、中学や高校、大学に進学する金もなくなるから、将来の見通しが立たなくなる」
そう思い込んでしまう子どもは、少なくないだろう。
チャットGPTのようなAI相談したことが問題ではなく、たかが親が逮捕されるだけで、子どもの生活や進路が望めなくなってしまうことが問題なのだ。
こども家庭庁の担当大臣である黄川田仁志は、阿部さんの暴行事件で娘がSNS上で中傷されている現実に対して、こう言った。
一見、まともなコメントのように見えるかもしれない。
しかし、黄川田大臣は、親に傷つけられている子どもの苦しみに対して大臣として仕事をしてないことを自白したようなものだ。
まず、ほとんどの未成年は、親に暴行されても、189の通報ダイヤルを知らない。
次に、189通報で一時保護されたくても、一時保護所が満員で入れないことがざらにある。
3つめ、奇跡的に一時保護されても、親が逮捕されてしまえば、帰宅しても生活できなくなる恐れがあるので、養護施設か里親を選ぶしかない。
4つめ、一時保護所でも、養護施設でも、里親の元でも、そこにいる大人から再び傷つけられる「被措置児童等虐待」の危険がある。
こうしたことを今どきの子どもはインターネットで遅かれ早かれ学ぶので、189に通報するのをためらってしまう。
では、親から傷つけられたら、阿部さんのような暴行する親元にいる場合は、どうすればいいのか?
法律を変えることだ。
親が逮捕されても、子どもや奥さんが生活に困らないように、生活費や進学費などのお金を国が支給するという法律を作ればいい。
そうすれば、親に傷つけられている子は、ためらうことなく189通報できるし、110番に電話することすらできる。
このように、阿部さんの事件は、親の都合で子どもの人生が左右されてしまう理不尽さを、法律改正で解決できると気づかせてくれた。
他にも、親の都合で子どもが割を食うことは、山ほどある。
親の離婚で貧しくなり、中学受験に受かっても通学を続けられる金がないなんてことも、国がカバーしてやればいい。
さて、あなたには、子ども時代に親の都合に振り回されたことはないだろうか?


