あなたは、70歳になっても恋ができるだろうか?
いや、恋が「落ちてしまうもの」であることなど知っている。
僕も今年9月で55歳になる、大人だからだ。
そんな僕は、『セルロイドの海』(ロフトブックス)という小説を読んで、「うーん」とうなってしまった。
この小説は、70歳で3回めのピースボートに乗った平野悠さんの「実録小説」だ。
内容をサクッと言えと頼まれれば、「船上の寅さん」と一言で答えよう。
100日以上の船上生活の中で、出会ってしまい、平野さんが恋に落ちたという女性たちは、平野さんの人生とは見事に好対照な「平凡」な人生をしとやかに生きてきた方々だ。
では、平野さん自身の人生はどれほど激しいものだったのか?
それは『定本 ライブハウス「ロフト」青春期』(ロフトブックス)にくわしい。
大学時代に左翼運動にかぶれ、卒業後に入れた出版社を追い出された26歳の悠さんは、失業中のまま、就職先のあてもなく、奥さんに子どもができるというタイミングで、ジャズ喫茶「烏山ロフト」を創業。
仲間の尽力も得て、なんとか店舗営業を軌道に乗せる。
それ以後のライブハウス経営の成功から現代に至るまでの日本のロック・ヒストリーへの功績は、同著を読んでほしいが、その本の巻末で、60歳になった平野さんは「孤独願望病」に陥り、旅も読書も音楽も自分の心を晴らすことができなくなっていた、と書いている。
孤独でいたい。
これは、自分の夢を多くの人々が支えてきてくれたゆえに、返しようもない恩義に疲れてしまったということなのだろうか?
それとも、誰かと何かを一緒にやる面白さや楽しさに飽きてしまったということなのか?
それでも、恋だけは「堕ちてしまうもの」なので、自分では制御が利かない。
したくなくても、突然、出会いの方からやってきてしまうのだから。
『セルロイドの海』を読むと、平野さんはまず、夫の浮気に苦しめられてきた晴美さんと恋に落ちる。
その恋が想定外の結末を迎えるのもつゆ知らず、麗子さんという年下の女性(といっても60代)にも恋をする。
この小説は、恋をする前も後も「ひとりぼっち」である1人の70歳男を通して、どこか出会いという不可避の運命に対して、「自分の行く末を誰にも左右されたくない」「自分の人生くらい自分で決めたい」と抵抗する人間の性(さが)を記録しているようだ。
そうした性が幸せか、不幸かなんて、死ぬまでわかりはしないし、世間が決めるようなことでもない。
「幸せの形ぐらい、私に決めさせて」(さだまさし『向い風』)ということなのだろう。
もっとも、本人は、いたって自然体で、著者インタビューにもビール片手に応じてくれたので、あなたもビール片手に動画を見てほしい。
なお、ロフトグループもコロナ禍の影響で売り上げダウンが避けられず、平野さんは2億円以上を日本政策金融公庫から借りた。
その金で何とかこの1年間をしのぐそうだ。
ぜひ、上記2冊の画像をクリックし、Amazonで買って応援してほしい。
どちらも、機動隊に突っ込んでいったあの命の高ぶりを取り戻すために奮闘を続けた男の一生を垣間見る面白さがあるから。
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