5月1日、大阪市西成区で、28歳の男が小学生7人を車でひいた。
被害者の一人の女子児童は、顔から血を流して重傷と報道された。
加害者の男は、東京から大阪へ移動し、犯行後すぐに現行犯逮捕されたが、犯行動機について「すべてがイヤになって…」と供述したそうだ。
無差別に子どもを標的にした事件は、これまでもあった。
24年前の2001年に起きた大阪の池田小事件は、覚えている人もいるだろう。
その事件では出刃包丁が使われ、子ども8人が命を奪われた。
その7年後の2008年には、東京・秋葉原で2トントラックやナイフで無差別に命を奪う事件が起きた。
他にも、武器を持つことで弱者を襲いやすくする犯罪はいくらでもあるが、弱者を大量に傷つける事件の加害者は、ほとんど男性だ。
なぜ、男だけが弱者の命を大量に奪うのか?
歴史を振り返れば、戦争をしてきたのも男だし、政治の実権を握ってきたのも男だし、家族を養う責任を世間から期待されてきたのも男だ。
警察庁が発表している犯罪の男女差でいうと、男性の犯罪者は女性の犯罪者の4倍も多い。
この傾向は、未成年でも変わらない。
犯罪は自分の攻撃性を外に向けることだが、自分の内側に攻撃性を向ける自殺でも、男性が女性より2倍も多いという現実がある。
男性は、自分自身の攻撃性をコントールするのが下手なんだ。
その理由について、伊藤公雄(いとう・きみお)さんという社会学者は、こう解説している。
それは、それで正解なんだろうけど、女性は男性のために社会参加したいわけじゃないし、女性の社会参加を難しくさせているのは男性が作った制度や常識だよね。
なので、女性の社会参加を女性に頼むだけでは、いつまで経ってもジェンダー平等も、女性の社会参加も、男性の生きづらさの解消も、実現しないだろう。
男性自身が自分の生きづらさを解消するために大事なことは、伊藤先生が指摘した3つの欲望を捨てる努力や工夫をすることだと思う。
① 競争に勝ちたいという優越志向
優越志向は、「戦争の代わりにサッカーをする」というハームリダクションの発想で克服できるはずだ。
ルールを守り合い、ルールの下で互いに切磋琢磨するなら、その範囲を守ればいい。
この場合、範囲を守るとは、スポーツや文化以外の分野では、優越的地位に立ちたがるようなふるまいを避けることを意味する。
たとえば、「俺はビジネスで億万長者になって六本木ヒルズに住んでやる」とか、「受験戦争に勝ち抜いて東大を首席で卒業してやる」とか、優越的地位そのものを得ようとする過剰な承認欲求こそが浅ましく愚かな欲望だと気づくことだ。
② ものを自分の管理下でコントロールしたいという所有志向
女性や子どもをモノ扱いする傾向は、広く男性一般に見られるが、その自覚がない男性は多い。
80年以上前の民法にあった家父長制では、女性や子どもは人権は奪われていたが、現代でも結婚のあいさつで「娘さんを僕にください」と言う男は珍しくない。
「ください」って何なの?
女性はモノじゃないし、親や家と契約してるわけでもないんだよ。
なのに、親が自分の子どもを自分の所有物のように考えている場合、「おまえには娘はやらん」という言葉を平気で言ったりする。
立憲民主党の国会議員も、夫婦別姓の議論で、子どもが親に一方的に姓も名前もつけられてしまうことに、何の疑問も感じていない。
日本国憲法第13条では、「すべて国民は個人として尊重される」と明記されている。
なのに、姓や名前を国民が自由に変えられる権利を守るどころか、法律を作って国家が国民の自由を縛るなんて、国会議員が国民をモノ扱いしてるのと変わらない。
男性議員が多数派の政党や国会では、国民を支配し、コントロールしたい欲望が、うっかり出てしまうのだ。
③ 自分の意思を他人に押し付けたいという権力志向
権力志向は、権力を持っている人自身が、自覚しているとは限らない。
権力は身近な場所にいくらでもあるのに、従わざるを得ない弱者のガマンによって、権力は日常的には見えにくいようになっているからだ。
たとえば、親子関係。
民法改正で、「親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない」という文章に変わったが、それでも子どもの居場所は親にしか決める権利がない。
つまり、親に傷つけられても、児童相談所に相談しても、子ども自身には自分の住みたい場所を選ぶ権利がない。
そのため、なんとか一時保護されても2か月を超えて保護されたいなら、家庭裁判所の許可が必要になる。
それぐらい、日本の親子関係には権力勾配があり、人権を持つ1個の人間として対等に向き合うことができない法律になっているのだ。
日本の子どもは、いまだに親に支配されているが、親自身が自分の権力を理解できず、子どもに対する支配欲を自覚することがない。
他にも、たとえば、マネジメント契約をしている未成年タレントと事務所の間にも、権力勾配はある。
マネジメントする事務所が、歌う楽曲の方針や、出演する番組、売り出したいキャラなどを一方的に決めて、未成年タレントはその命令に従うだけだ。
これで結果的に売れて、人気が出て、年収が一般サラリーマンをはるかに超えるぐらいになれば、未成年の代わりに事務所と契約している親は納得するかもしれない。
しかし、未成年は、親が契約してしまっている以上、嫌いな仕事や納得できない扱いを命じられても、抵抗や拒否をする権利すら、事実上、奪われている。
親が「ジャニーさんのいる合宿所に住んでがんばれ」と言えば、ジャニー社長に何をされても、親に相談することがためらわれる。
日常的にセクハラを受けても、パワハラを受けても、10代なら親の期待を裏切るのは容易なことではないだろう。
そうなると、自分の意思をないがしろにされる屈辱に耐えなければならなくなるが、このストレスが人気者になり上がった人に与えるのは、自分の意思を他人に押し付けたいという権力志向だ。
中居正広は、フジテレビにとって視聴率のとれる数少ないタレントの一人だった。
テレビ離れが激しい今、スポンサー企業をつかまえておき、テレビ局の高収入を守るためには、中居正広をつなぎとめておく必要があったのだ。
だから、女性社員をあてがってまで、中居正広を特別待遇したわけだが、10代でジャニーズ事務所に支配され、売れるまでずっと支配されるストレスを抱えていた中居正広にとって、フジテレビに接待されることは、王様気分を満足させたことだろう。
25歳の若い女性から見れば、50歳を過ぎたおじさんである中居との間には、年齢差だけでも権力勾配があるのに、視聴率の取れる立場と、その立場のタレントで飯を食うテレビ局の立場という権力勾配がある。
しかし、中居やフジテレビは、あくまでも恋愛トラブルだと主張した。
権力を持つ側に権力勾配の自覚がない良い例ではないか。
時代劇のドラマなら、将軍や代官が権力を利用して町娘を手籠めにするのと同じことだとわかるのに、権力側は弱者に対して対等なふるまいをしているというおごりがあるのだ。
それは、この日本社会が、あまりにも男にとって都合の良い社会であり、それゆえに自分が持つ権力の大きさや腕力の恐ろしさ、経済力や学力の濫用を反省しずらい社会だといえる。
もちろん、弱者男性を名乗りたい人は少なからずいるだろう。
それなら、まず周囲が期待する男らしさから降りることだ。
周囲から迫られての結婚なんてしなくてもいいし、「女性を食わせてやろう」なんて思わない方が家族に対して「誰のおかげで生活できてんだ!」と怒ることもない。
家を買う必要もないし、恋愛だって無理にしなくてもいい。
もちろん、家だって継がなくていい。
サラリーマンになる必要もないし、さみしさを解消できないからという動機で友達を増やす必要もない。
そうした世間からの同調圧力に抵抗するには、自分が親にどう育てられ、どのように現在の状況に導かれてしまったのかを、自分史年表を作って思い出してみるといい。
大人になるとは、親や教師が望む都合の良い存在になることではなく、自分が望む自分になることだ。
自分が納得できる人生を具体的に想像し、〆切を決めて粛々と自分のやりたいことを実現させることだ。
あなたがもし自分以外の声に応えて、自分らしさを失っていると思うなら、そうした雑音をすべてシャットアウトし、自分らしい選択をしよう。
自分の人生は、自分にしか責任が取れない。
どんなに周囲の期待に応えても、周囲とやらは責任を負ってはくれないのだ。
自分の求める道に対して「どうせムリ」と思ってしまうなら、それは親や誰かの呪いの衣にすぎず、「どうせムリ」と考えてるのは自分自身ではないと気づこう。
本当は誰でも、自分になりたいだけなんじゃないかな?
そこでみなさんに質問したい。
昔は「どうせムリ」と思い込んでいたけど、実は大人になるにつれて、できるようになったことは何?
たとえば…
●学生の頃は友達付き合いが苦手だったけど、20代に入ると友達がふつうにできるようになった
●「恋愛相手なんて作れない」と思っていたけど、気がついたら結婚してた
●「離婚なんかできない」と思い込んでたけど、現実にはできてしまった
●「60歳になるまでとても生きられない」と思ってたけど、もう60歳を過ぎてる
●子どもの頃はテレビ中毒で、テレビから離れられないと思ってたのに、最近は全然見ていない
●勉強が苦手で避けていたのに、自分がほしい資格や免許はとれてしまった
あなたの体験を、ぜひ動画のチャット欄やコメント欄に書いてほしい。
(※スマホで生配信を見る方は、動画をクリックし、上部に表示される動画タイトルをクリックすると、右側の下の方に概要欄が現れます。
拡散用に大きな画像を使いたい方も、概要欄を。この記事の冒頭の画像を使ってもOK)
下の「シェア」や「ツィート」をポチッと…
55分でサクッとわかる
子ども虐待の現状と、新しい防止策