「こども庁」から「こども家庭庁」へ、自民党内での名称変更があった。
もっとも、国会で承認されるまでは、どちらも「仮称」にすぎない。
大事なのは、世論がどちらを支持するか、だ。
来年(2022年)7月には、参院選がある。
世論が「こども庁」に傾けば、どんな国会議員も国会で「こども家庭庁」を言い出すのが難しくなる。
すでに、こども庁の名称に戻すネット署名が始まっており、2万人以上の賛同者を集め、日々増え続けている。
この署名は、自民党だけでなく、公明党・立憲民主党・日本維新の会・国民民主党・日本共産党などに広く持ち込まれるものだ。
そうした政党に「こども庁」の名称を支持する世論の声が大きいことを伝えれば、国会での名称審議の際に「こども家庭庁」を言い出すことがリスクになることが理解されるだろう。
だから、この署名に1人でも多くの人が賛同し、拡散していけば、世論が「こども庁」の名称を支持し、最終的に国会で「こども庁」の名称が決まる勝算は十分にある。
自民党の中では、伝統的家族観(=家父長制的家族観)を重んじて「家庭」を入れたがる人はむしろ少数派。
むしろ、「こども家庭」の言葉を入れたがっている維新・公明などの野党に配慮した結果といえる。
自民党の基本方針で「こども家庭庁」の名称を渋々承諾したのは、国会審議の際に名称問題に時間を取られ、時間切れで予算案まで議決できなければ、こども庁を新設できないことを恐れたからなのだ。
それは「名を捨てて実を取る」現実路線の保守派が集まる自民党の作法といえるが、世論が「こども庁」にこだわってくれれば、いつでも元に戻せる。
問題は、国会がしばしば世論を無視しがちになる点だ。
そこでキーになるのは、立憲民主党と公明党。
立憲民主党は、旧民主党時代の2006年に「子ども家庭省」を提案したが、創設のための関連法案が多すぎて、審議時間切れで頓挫した。
同党は「子ども家庭省」の名称を2021年4月まで15年間も長く使用していたため、自民党の国会議員も、同年5月に2021年5月に立憲民主党が「子ども省」(仮称)の名称で国会に法案を提出したことを忘れていたきらいがある。
もっとも、名称を変えても、立憲民主党は「チルドレンファースト」と言いながら、あくまでも「養育者・支援者・教育者の大人」が期待する子ども像を主軸にし、子どもの頃に虐待された当事者の話を聞くことはなかった。
逆に、自民党「若手」議員を中心としたこども庁設立のための勉強会では、親から虐待された当事者、学校でいじめられていた当事者、息子を失った自死遺族の当事者など、当事者の声を広範囲に聞く試みを重ねてきた。
僕自身は野党に期待したいのだが、残念ながら立憲民主党は、子ども時代に「法の壁」によって不遇の目に遭った当事者の声より、専門家や有識者の話を大事にしてきた点で、自民党「若手」議員の勉強会より何周も遅れているのだ。
そのように、当事者の声を聞かないのが立憲民主党の文化なら、名称ではなく、こども庁の運用面で自民党と対立することになりかねない。
ちなみに、児童虐待の相談件数を30年以上もの長きにわたって一度も減らせず、30年前の約200倍にまで増やし続けてきた要因は、当事者不在で虐待防止策を作ってきたことにある。
それは、親に虐待される痛みを知らない「有識者」の言い分を鵜呑みにしてきた結果だ。
立憲民主党が、虐待やいじめなどの被害を受けた当事者の声を積極的に聞くつもりがないなら、国会では「法の壁」に苦しむ当事者たちにとっての抵抗勢力となり、次の選挙でも負け続けるだろう。
■宗教虐待によって子どもの信者を獲得する団体
もっとも、自民党と連立政権を組む公明党が「こども家庭庁」の名称を支持している背景には、当事者たちにとって、さらに深刻なものがある。
ここ数年、「宗教虐待」の問題が報道されるようになってきた。
赤ちゃんの頃から親が信じる宗教の団体の一員にさせられ、親の宗教活動に無理やりつき合わされたり、選挙応援に駆り出されたり、信者の家族であるために友人から避けられてしまう子どもがいる。
そこで、憲法や子どもの権利条約が保障する「信教の自由」が子どもにもあると、チルドレンファーストの基本を法制度に組み入れれば、公明党の支持母体である創価学会はどう反応するか?
親が創価学会でも、子どもはキリスト教の信者になってもいい。
あるいは、創価学会からいつでも抜けていい。
親の信じる宗教を信じなくてもいい。
そうなれば、創価学会だけでなく、子どもを親の信じる宗教に入信させている団体は、次世代の信者を増やせなくなり、信者から上がるお布施も商品購入代も入らなくなり、財務状況が悪くなる。
すると、信者は徐々に減っていき、選挙時の集票マシンとしての価値も下がり、選挙対策を求めてきた政党に対して発言力もなくなり、事実上の団体解体に追い込まれるリスクを負う。
親が子どもを入信させればこそ、団体活動の持続可能性を担保できる宗教団体にとって、子どもに信教の自由を法的に保証することは、安定的な財源を失うことになるのだ。
子どもに対して宗教虐待をすればこそ、宗教団体は既得権益を守れる。
その構造を持つ団体にとって、チルドレンファーストは選挙時の疑似餌にすぎず、本心から求めるものではないことは明らかだ。
だから、公明党は「こども庁」に「家族」を入れたがる。
「家族」が入ればこそ、親と同じ宗教に子どもを入信させる大義が立つからだ。
(※そして、公明党は選挙で自民党に協力してきたゆえに発言力を持つ)
ただでさえ分裂を繰り返し、トップのカリスマ性も薄れ、組織固めも難しくなっている今日、親によって子どもを新たな信者にしていかなければ、組織が持たない宗教団体にとって、「家族」という枠組みがほしいわけだ。
しかも、宗教団体を集票マシンにしている政党は、公明党だけではない。
大量にある信者の票をちらつかせることで、宗教団体側の意向を政治家に飲ませる立場がほしいので、あえて支持政党を明らかにしない団体もある。
これは、政治家だけでなく、有権者のあなたに気づいてほしいこと。
「チルドレンファーストなら、家庭はセカンド」
「親に虐待されて育った有権者には、家庭は地獄」
こうした被害当事者の声を聞こうとしない限り、チルドレンファーストは絵に描いた餅。
有権者のあなた自身が、子どもの人権が法的に守られていないことを知ろうとしないなら、子どもを親権者の奴隷にしている民法の恐ろしさにも気づかないまま、「自分以外の誰かが動いてよ」という姿勢を取り続けることになるだろう。
それって、社会的ネグレクト(養育の放棄と無関心)なのよね。
そんな大人を、子どもは信用してくれるかな?
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