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■福岡・岡山・奈良の虐待防止策の講演の感想


 昨年(2017年)から『Power to the Children』(親への手紙 全国ツアー)と題した子ども虐待防止の講演イベントを全国各地で行ってきた。
 今年はノーギャラだった昨年とは異なり、予算を最初から確保するため、1本15万円程度の資金調達を現地スタッフにお願いすることにした。

 今秋の講演は、すでに福岡・岡山・奈良での開催が終了している。
 そこで、各地の状況がどんなものだったのかを、これから他の開催地へ訪れる方向けにざっと紹介したい。

●福岡、日本で一番元気な街のすごさ

 11月10日、福岡の開催運営を担ったのは、昨年は共催だったNPO法人アコアさん。
 福岡市の助成金を早くから得ていたため、資金にはさほど心配はなかったはずだけど、広報には苦労したようだ。
 アコアの代表・わねざきいくえさんと、昨年の開催者・杉山佐和子さんが、2人で不眠不休で動いてくれた。
 おかげで当日は会場定員をほぼ満たす約40人が参加し、北九州市議の村上さとこさんも一般参加してくれた。



 終了後の打ち上げには、広報ビデオにも出演してくれたNHK福岡の女性ディレクターや、西日本新聞の女性記者も参加してくれた。
 西日本新聞は、11月20日の記事でイベントの模様を報告してくれた。

 ちなみに、福岡では前日には『日本一醜い親への手紙』の朗読会が行われ、翌日には当日の講演ビデオの上映会が行われた。
 このように3日間を祭りのように演出し、少しでも子ども虐待への関心のハードルを下げようと試みることは日本初のことだ。

 福岡は行くたびに元気をもらえる。
 もちろん、開催する方は大変なんだけど、みんな笑顔なんだ。
 日本で一番元気なのは、間違いなく福岡。
 今でも若者が深夜にもつ煮込みで酒飲んでるのは、福岡ぐらいだと思う。

●岡山、福祉マインドの乏しい街の生きずらさ

 昨年、大阪で行われた毒親フェスに参加した形而上れいじさん(以下、れいじさん)が主催者に名乗りを上げ、岡山で初めての子ども虐待防止策イベントが11月24日に実現した。
 れいじさんの両親は、れいじさんの話を聞けば聞くほど、どうかしている。
 父親は、れいじさんとれいじさんの妹に性的虐待をしたし、母親は精神病で入院経験があり、家の中を撮影した画像は「ごみ屋敷」そのものだった。

 そんな家の中で子どもの頃から精神的に追いつめられたれいじさんは、やがて精神病者になったが、生活保護を受給でき、今は世帯分離している。
 そんな境遇でも、彼女は地元で毒親育ちの集まれる茶話会を何度も開催し、僕の講演会も開催するに至った。

 ところが、そんな彼女の奮闘ぶりも知らない大馬鹿野郎がいた。
 イベント当日の2日前、れいじさんの家を訪れた福祉事務所のケースワーカーが、本名を知っているはずなのに「れいじさんですよね?」とハンドルネームで彼女に問いかけた。
「新しい口座へ入ったお金は申告してください」と。
(※申告すれば、寄付された15万円が減額され、れいじさんは1か月間、餓えることに)

 その口座とは、イベントの開催コストを賄う寄付を受け付ける口座として新設したもので、れいじさん個人には1円も入っていない。
 おそらくネット上で口座の新設を知ったバカが、「生活保護の受給者のくせにイベントなんかやろうとしてるぜ」と嫉妬し、福祉事務所に密告したのだろう。

 れいじさんからその旨を知らされた僕は、担当の福祉事務所に電話した。
 ところが、職員は「でも彼女の個人名義で作ったんでしょ?」の1点張り。
 法人未認証の団体は、どこの金融機関でも口座を団体名で新設できない。
 だから、未認証の時点では、代表者が個人名で口座を設ける。

 そういう民間の一般常識すら地方公務員は知らないし、知ろうともしないのだ。
 だから、「どういう条件なら生活保護の受給を減額されないんですか? こっちの努力のあり方を示してくださいよ」と問い詰めるも、「わかりません」をくりかえす。
 どれだけ責任を回避しようとするんだ、このお役所仕事のバカ野郎は。

 結局、地元の共産党市議・東つよしさんに「初めまして」のメールを送り、岡山のイベントスタッフ2名と一緒に福祉事務所への同行をお願いすると、すぐに行ってもらえた。
 すると、話は10分でまとまった。
 「寄付金の使途明細として領収書を年内に届けるように」で済んだのだ。
(領収書を届けてもグチグチ言うようなら、役人の名前を知事・市長・メディアに伝えるつもり。全国ニュースにして、クソバカな公務員の職務責任を問おうと思う)

 イベント当日も、会場の岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館に持参したパソコンがプロジェクターにつないでも機能しない不具合が起こり、会場の県の施設の事務室から借りようとしたら「貸せません」。

 学生スタッフが慌ててコンビニに走り、資料画像をプリントして配布しようとしたが、間に合わない。
 そこで再度、事務室に粘り強く「パソコンを貸してほしい」と交渉したら、今度は渋々出した。
 講演はもう後半を過ぎていたが、なんとか間に合わせた。
 事務員は、知事や地元の有力者、有名人がパソコンを借りに来ても、同じ対応をするの?

 嫌がらせとしか思えない。
 そう確信したのは、ごみ箱に紙ごみをしてようとしたら、「持ち帰ってください」と警備員に止められたからだ。
 ごみ箱さえ使えない? ここは山か?
 県の職員が、自分を食わしてくれている納税者の県民のために働くのは当たり前だ。
 経費削減で自分の仕事を増やさないようにしたいなら、「岡山県は知事と議会が無能なのでごみ箱にごみを捨てられません」という貼り紙でもデカデカと掲示しておけよ。

 もっとも、岡山の開催チームのスタッフは「それが岡山」と言った。
「この街では、障害者手帳を持っていてもバスは半額だし、手帳を見せれば運転手に『チッ』と舌打ちされますよ」

 そんな街でれいじさんのチームAC岡山は約20名を集め、前述の市議・東さんも一般参加し、岡山に子ども虐待防止策のイベントを初上陸させた。

 終了後は、サイゼリアで成功を祝った。
 クソみたいな土地でも、生きてかなきゃいけない。負けてたまるかっ!
 何があろうと、僕らの勝利だ!


●奈良、ママさんチームの仕事ぶりに感動!

 奈良では、11月25日に王寺町のやわらぎ会館で開催された。
 開催チームは、子育て中のママさんを中心とするメンバーだ。
 それゆえ、僕が何も言わなくても、キッズスペースを会場の後ろの隅に設けてくれた。
 これ、すごく大事なこと!

 たいていの講演会は、大人の都合で静まり返る空気を強いてくる。
 でも、今回は子どもを虐待から守るために集まったのだから、子どもが主人公。
 泣いても、奇声を発しても、走り回っても、それが自然状態のはずだ。
 子どもがいる社会を前提にするなら、子どもがリラックスできる環境を作るのは当然。

 このチームのさらにすごいところは、県内の自治体の後援を広く取り付け、開催経費を賄う寄付を早めに調達し、早々と「入場無料」を打ち出して、約50人の動員を実現したばかりでなく、地元の県議・市議・町議なども参加させた点だ。

 この仕事の速さと丁寧さに、本当に頭が下がる。
 しかも、当初は主催者挨拶として明るいキャラの主催者代表・西本亜樹さん(香芝のおかあちゃん合同会社代表)が先に話すところを、『日本一醜い親への手紙~』の朗読3人の登場の後にしてもらうようお願いしたら、臨機応変に応じていただけたことだ。

 おかげで、いきなりヘビーな内容の手紙の朗読(しかも、かなよさんのマイクなしの肉声は圧巻!)の後で、西本さんがウルウルになりながら挨拶することになり、会場全体が虐待の深刻さに目が覚める思いで一つになった。
 このように「痛みを思いやれる気持ちをみんなで分かち合う」儀式が、朗読なのだ。

 講演の後、参加者と一緒に子ども虐待防止策を考える時間の中で、僕は「孫カフェ」のアイデアを言い出した。
 10歳ころから仕事を学べる場所を作り、高齢者向けに小学生が給仕する「孫カフェ」を作ると、仕事の価値や起業へ関心を持ち始める子も増える。

 自分で稼ぐ面白さを早めに理解できるようになり、自ら店を経営できる経験を得れば、中学を卒業する頃合いには、親より稼ぐ子も出てくるかも。
 自力でお金を稼ぎ出せたり、自分の仕事を自分で作れるようになれば、親から虐待されようとも、家から飛び出しても売春する必要はなくなる。

 子どもには、伸びしろがある。
 わかりやすく教えれば、どんどん吸収して学んでいける。
 「孫カフェ」で検索すると、すでにいろんな試みが始まってることにも気づくはずだ。

 会場では、開演前と開演後に「毒親アートフェス」の作品を見ることもできた。
 これは福岡では余力がなく後日に見送られたが、岡山でも実現できた。
 アートのビジュアルは、手紙本の言葉とはまたべつの感覚で、虐待の痛ましさを直感的に伝えてくれる。


 終了後、スタッフ・参加者・取材関係者を含めて、王寺駅前の店でたこ焼きパーティで労をねぎらった。
 そこでは、小学生男子がたこ焼きを手際良く焼いては、みんなにふるまっていた。

 このパパがやってる店「ビアカウンターちょこっと」がすぐ隣にあるというので、僕はそこで飲んだ。
 その小学生は、ここの「大店長」だったのだ!(写真はパパ)

 なお、奈良でのイベントでは、地元の虐待サバイバーが集まれる自助グループを作るという「トラウマサバイバーユニオン奈良」の活動開始も、チームスタッフの一人、菊池啓さんから発表された。
 菊池啓さん自身、虐待サバイバーであり、その経験を講演で話せるというので、メディア関係者は取材してほしいし、自治体や青年会議所などは彼女に講演を依頼してほしい。

 奈良での開催は、僕の理想に限りなく近いものになった。
 僕の理想は高すぎるので、完璧なイベントなど実現できないが、奈良チームの仕事ぶりは本当にステキだった。

 開催前は「子育てのがんばりが否定されるようで怖かった」と告白されたのだけど、僕は子育てのがんばりを決して否定しない。
 それどころか、子育ての苦労をいかに軽減できるかの仕組みと事例を分かち合いたいし、子育て支援では虐待の相談件数が減らせていない現実から目をそらさず、「育てられる側の子どもから見た防止策」に目を向けてほしいだけなんだ。


 以上、各地の開催スタッフは、本当によくやってくれたと思う。
 仕事、子育て、病気、障害などを抱えたうえで、イベント運営に時間と労力を割いたのだから、イベント終了後は、もう真っ白に燃え尽きたことだろう。

 今ごろは既に疲れを癒してると思うけど、市民自身が運営資金を調達し、多くの人の力を借り、多くの人を集めるイベントを実現できたことは、より若い世代にとっても、勇気を与えたと思う。

 実際、奈良の会場にいた中学生女子は、笑顔で「面白かった」と言ってくれた。
 たぶん、話の全部はわからなかったろうけど、子ども虐待を解決できることに希望を感じてくれただろうし、そのために地元の大人たちがたくさん動いてくれている現実を目の当たりにして感じ入るものはあったはずだ。

 僕らの体は、僕らだけの体じゃない。
 これから大人になる次の世代にとって大事な仕事をするための体なんだよね。
 そういうことを、僕はこうしたイベントの実現を通じて、現地スタッフのみなさんから学ばせていただいた。

 今週末は、東京群馬でこの『Power to the Children』(親への手紙 全国ツアー)が開催される。
 その後、鳥取大阪広島でも開催される。

 来られない方は、せめてこのブログ記事を読んで、寄付や情報拡散で応援してほしい。
 12月9日は、全国から群馬県桐生市に来てほしいんだ。
 虐待サバイバーよ、立ち上がろう!
 当事者の声をどんどん広めようぜ!


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