男性アイドルグループの一人が逮捕された。
多くの人にとって、どうでもいいスキャンダルの一つにすぎないだろうが、ここに日本経済が停滞し、先細りしていくしかない構造が見えるので、取り上げておきたい。
まずは、この記事を読んでおこう。
この記事で書かれた猪俣さんは、2025年2月のタイムレス・プロジェクトからメンバーに加入したそうだ。
つまり、所属事務所のSTART0エンターテインメントにマネジメントされて、たった1年半で不祥事を起こしたことになる。
START0社とは、ジャニーズ事務所の所属アイドルと社員がそのまま移籍してきた芸能事務所で、1000人を超える性被害の申告者が殺到し、世界的にも未成年に対する深刻な犯罪があったことで知られている。
当然ながら、二度と不祥事を起こさないように所属アイドルに対する研修を徹底させているかと思えば、実態はどうもその逆であるらしい。
もっとも、芸能界のみならず、日本社会全体が目先の利益に目を奪われおり、芸能界なら新人アイドルに対して「一刻も早く金を稼げるアイドルになってくれ!」と期待する。
金が優先されると、大事なものが先送りされる。弱い立場の人権は大事にされなくなり、横暴な人間に富が集まり、深刻な問題に誰もが口を紡ぐようになる。
そして、性被害に遭った少年もその親も、被害を表ざたにできないまま何十年も経ち、加害者は既にあの世へ行ってしまったり、社員として残っているなど、賠償金額も安いままで、決着を図ろうとするような、浅ましく意地汚い現実だけが残り、被害者たちは悔し涙を飲むだけだ。
このように、目先の金を追う前に、人権を守る必要があることは、ジャニーズ問題の教訓だったはずだ。
しかし、ジャニーズ事務所が事実上再編しただけのSTART0社は、猪俣さんに対して1年半も十分な人権研修を徹底することをしなかったことが懸念される。
どんな人権研修が必要なのかと言えば、「女性を殴ってはいけません」といった道徳的な勉強で終わらせず、きちんとビジネスとして責任が問われることを教えることだ。
芸能界では、売れれば売れるほど、企業からの大金も広告で集まるし、広告収入で番組予算を賄っているテレビ番組に出演することになり、ますますアイドルとしての所得は増えることになる。
そうなると、いざスキャンダル記事が雑誌に書かれた時、企業から入っていた莫大な広告費は事務所に入らなくなり、テレビ番組にもグループ全員が出演できなくなるなどの悪影響が大きくなる。
すると、スキャンダルを起こさなければ事務所に入るはずの大金は入らなくなり、それどころか広告していた商品のイメージが悪くなるので違約金を支払うことを求められたり、同じ事務所のべつの人気グループを安く使うことに同意させられたりしかねない。
要するに、たった1回のスキャンダルで、やらかした芸能人が個人的に負うべき損害賠償のお金は、短期間に億単位にまで増えてしまいかねないのだ。
現時点での広告スポンサーの動向は、この記事を読んでみたい。
しかも、週刊文春やFRIDAYなど雑誌の取材は、素人が「このぐらいバレないだろ」と思っていても、まずバレている。
記事にするタイミングを遅らせているだけで、写真や証言を毎日蓄積しているのが、芸能雑誌のプロなのだ。
25歳くらいの若者で、芸能経験が数年レベルの猪俣さんが所属するなら、事務所は所属する契約の時点で「スキャンダルになったら、きみは数億円を賠償する側になるよ」と教える必要があった。
タイムレス・プロジェクトが本気で成功を目指していたなら、若い女性と同じ車に乗るだけでも雑誌記者の餌食になるようなものだ、危ないと理解できるような人権研修が必要だったはずなのだ。
そして、おそらくそうした深刻な人権研修は今もアイドルたちに提供されていないだろうし、旧ジャニーズ事務所でこんな脇の甘い状況なのだから、他の芸能事務所なら、なおさら人権研修をタレントを守るような育て方をしていないと察する。
だから、猪俣さんが芸能活動を続けるにしても、START0社との契約は打ち切った方が身のためだろうし、そもそもスキャンダルを起こした若者を救おうとはしない芸能界にしがみついても良いことはないような気がする。
日本の芸能界は、本人が契約できない未成年に対しても責任を取らせたがるほど、法律的におかしい職場だから。
J CAST NEWSの9月25日付の記事に、事務所をクビになった少女についての記事があった。
記事にある小松さんは、現在は18歳で成人だが、芸能活動を始めた時点では未成年だった。
その時点では、契約上の責任を取るのは親であり、子どもの夢さんではない。
だから、夢さんが起こしてきたトラブルについて、所属事務所から損害賠償を請求されたら、数千万円も親が支払うことになることを、事前に学ぶ必要があった。
もちろん、18歳になったら、損害賠償を請求されるのは、夢さん個人の責任になることも教えておく必要があった。
「そんなことぐらい、教えなくてもわかるだろう」という理屈は、人間が自動的に大人になると勘違いしているの発想だ。
残念だが、日本社会、とくに現代の日本社会は、子どもや若者を育てることをせず、「育てなくてもあらかじめ役に立ちそうな若者だけとだけ仕事ができればいい」と考える大人が多い。
これは、不景気で余裕がなく、即戦力が欲しいという生産性重視の発想だ。
しかし、どんな人材も、育てなければ、稼ぐ力も持てないし、いろいろな性格の人間と折り合いをつけてつき合うという経験も得られない。
自ら学ぼうとするか、それはそれで難しいから、教えられるチャンスのある場所へ自分から足を運んで学びを得ようとしない限り、どんどん孤独で、どんどん貧しい境遇に追いつめられていく気がするのだ。
Netflixでヤンキーとギャルが恋愛リアリティショーを見せる『ラブ上等』を見てると、親や世間や学校に愛されてこなかったなれの果てのエピソードが人生や恋愛、職業や性格に反映されることがよくわかる。
過ちをくり返したくないなら、必要なことさえ教えてくれなかった事務所からクビを言い渡されるより、自分からスパッと芸能界をやめて、引退を宣言してほしい。
それが、失敗の意味を受け入れた男に残された唯一の花道だろう。
さて、 あなたには、事前に教えてもらうべきことを知らされていないまま、失敗に導かれてしまい、自分だけが悪いかのように自分を責めてしまったことはないだろうか?

