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■市民主催のイベント運営の収支はどうなってる?


 あなたが、トークライブや講演会のイベントを企画・運営することになったとしよう。
 しかも、「入場無料」が条件につけられたとする。
 その時、あなたは何を思うだろうか?

 イベントをするとなれば、会場を予約する必要がある。

 民間のライブハウスは、会場レンタル代が数万円~数十万円ほどかかる。
 安い場所として、市や県の公共施設の空き状況を確認し、借りられても、数千円から1万円ほどかかるはずだ。
 イベント当日にプロジェクターやマイク、ハンドマイクなどの施設の機材を使うなら、会場費は1万円を見込んでおくことになる。

 場所が決まったら、今度はイベントの中身を考えることになる。

 あなた自身が人前で話すイベントに、誰が足を運ぶだろう?
 結局、人を呼ぶためのゲストを招いたり、そこで話すテーマに工夫をこらすのにリサーチに時間と労力がかかる。

 集客力のあるゲストは、そこそこ知名度がないと困る。

 すると、知名度のある人を会場に来てもらうのに、交通費や打ち合わせ時間を相手に負担させることになる。
 その方にノーギャラでお願いするにも、遠方からの往復交通費まで負担させられるか?

 やはり、最低限度として、往復の交通費や宿泊費をあなた自身が負担せざるを得なくなるだろう。

 大人なら、そこに謝礼を加えてお願いするのが、一般常識のはずだ。

 そして、イベントの会場や中身が決まったところで、イベントの開催をより多くの人に知らせる必要がある。

 少なく見積もっても、会場のある市内を中心に300枚ほどのチラシを印刷し、配布する手間をかけることになる。

 あなた一人で300枚のチラシをまくとすれば、移動の交通費も時間もかかる。

 誰かと一緒にやろうと思えば、スタッフを集める労力もかかる。
 スタッフを集めるなら、ミーティングに足を運ぶ交通費もかかる。
 300枚のチラシはあっという間になくなるので、追加予算も必要になる。
 (デザインをデザイナーに頼めば、数万円を追加出費せざるを得ない)

 公民館のような安い場所を前もって借りようとすれば手間がかかるので、ミーティング場所をカフェにすれば、そのつど飲食費の自己負担がかかる。

 これもあなたが全部負担するのは難しいし、ボランティアでスタッフをしてくれるみんなの個人負担がかさばって増えていくのを心苦しく感じるはずだ。

 以上、イベントを実際に開催しようと思えば、以下の経費がどうしてもかかるのだ。


◎会場費:1万円(※機材費を含む)

◎チラシ印刷費・設置の移動交通費:1~2万円(※ラクスルを使う場合)
◎打ち合わせの交通費・飲食費:1万円(※スタッフを3人×3回と想定)
◎その他、チラシ増刷・交通費の超過など:1万円(※想定外の出費を含む)
◎ゲストの交通費・宿泊費:3~5万円(※市外から謝礼なしで招く場合)

 ゲストの交通費や宿泊費を除外すると、ざっくり4~5万円はかかる。

 ゲストにかかる費用を足せば、ざっと10万円ほどかかる。
 この10万円をあなたが自分の財布から気前よくポンと出せるなら、すればいい。

 しかし、10万円を個人負担するとなれば、ふつうイベントなどやりたがらない。

 だから、2000円程度の入場料を見込んで50人を集客できるよう広報をがんばるか、あるいはクラウドファンディングで10万円以上を集めるかのどちらかになる(※手数料分を余計に集めないといけないからね)。

 もっとも、クラウドファンディングは、必ずしも案件が認められるわけではないし、認められても目標額面を調達できる保証もない。


(※実際、昨年『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』の製作費のためにMAKUAKEというクラウドファンディングを利用しようと、アメーバ本社まで出向いたが、この案件は却下され、自分で寄付募集のサイトを作って400万円の満額を達成させた)

 クラウドファンディングのリンクをネット上に拡散したくても、twitterのフォロワーが万単位で多いか、スタッフが大勢いるなら安心かもしれないが、そうではない人にとっては結構ハードルが高い。

 また、立ち上げたばかりのチーム(任意団体)では、自治体や企業から多額の助成金を獲得するのは難しい。

 そのため、イベントを「入場無料」にすることは難しくなり、万単位の個人出費を覚悟するか、入場料+寄付でなんとか赤字を出さないように工夫せざるを得なくなる。

 実際、事前に参加予約を受け付けても、ドタキャンもあるのが、イベントだ。
 当日、雨が降れば、客足は遠のく。
 地震や水害、雪害で電車や車の交通手段が遮断されれば、客もゲストもスタッフも会場に着けない。
 その時点ではすでに、会場費やチラシ印刷費、ゲストの交通費や宿泊費などは既に支払い済みだ。

 イベント中止なら、入場料で経費を補填できなくなる。

 当日の入場料が思ったより見込めなくなった時の数万円~10万円のコスト全額を、言い出しっぺのあなたが個人的に負担する責任を負うことになる。
 その覚悟ができるかな?


●入場無料は、スタッフたちの涙ぐましい努力の結果

 僕は昨年(2017年)から、「『子ども虐待防止』のための講演会イベントを各地で開催しよう。僕を招いてほしい!」とネット上から呼びかけてきた。
 その結果、昨年の秋冬は全国19か所から依頼を受け、ノーギャラで応じた。

 僕自身がノーギャラでも、前述したように各地の主催者には会場費やチラシ代、僕の交通費+宿泊費などの負担がある。
 そのコストのすべてをなんとか3万円程度に収めてもらい、入場料収入だけでまかなおうとがんばってくれた。

 それでも、平均1500円の入場料では、20人を集めないと赤字だ。
 ある会場で赤字になれば、現地の主催者が先に負担していた会場費やチラシ印刷費を先に精算し、残りを僕の交通費と宿泊費に充当させた。
 赤字になったら、僕だけが個人的に負担したのだ。

 僕の講演会を主催する現地の市民は、イベント開催を手がけるのも初めてだし、精神科の通院する方も珍しくなかった。
 彼らの経済的な負担や労力を少しでも軽減するために、19か所すべてのスタッフに対して開催ノウハウの相談に応じたり、僕自身、ホテルの半額程度で泊まれるゲストハウスを予約したり、新幹線ではなく深夜便の高速バスを使ったり、早割で安く上がるLCCで現地に飛ぶなど、コストカットに努めた。

 それでも、19か所もやれば、赤字になるところもあれば、想定外に黒字になるところもあった。
 10人未満しか参加者がいないところもあれば、会場のキャパを超えて集まったところもあったわけだ。

 想定外の謝礼をいただけた開催地もあって、19か所のトータルで結果的に大赤字を出さずに済んだ。
 もっとも、ボランティアスタッフにとっては、打ち合わせ時の飲食費やチラシ設置のための交通費が自己負担になってしまっただろう。

 さらに言えば、僕自身がノーギャラのままでいれば、運悪くイベント中止になった時に入場料収入を失い、その大赤字は僕個人が引き受けることになる。
 赤字の開催地が増えれば、その分だけ大きな痛手になる。

 しかも、僕は、月収が保証されているサラリーマンではない。
 本を書いて印税で飯を食っている自営業者なので、地方へ行って泊まって帰れば、その期間は執筆できる時間を奪われる(=収入が減る)。

 講演原稿も最新ニュースやその土地の事情に合わせて書き換えるので、それを書き上げる手間も含めると、1回の講演で3日間は仕事時間が奪われ、19か所なら2か月間ほど収入を得られず、貯金を食いつぶすことになる。
(※約2か月間の執筆機会の損失による額面は、ざっと40~50万円)

 それどころか、地方に行けば、外食費が講演1回で4食分も余計にかかるし、当日の資料をコンビニでコピーするにも僕の財布からお金が出ていくし、開催地すべての主催者・スタッフと毎日イベント運営の相談に乗るので、執筆時間はさらになくなってしまう。

 それでも、27年間も増え続けるばかりの子ども虐待の相談件数の伸びを見ていると、従来の解決方法ではいつまで経っても虐待という深刻な現実が終わらないことを痛感するので、従来にない新しい解決の仕組みを一緒に考えるチャンスを増やしていくしかない。

 政治家も、自治体も、既存のNPOも、誰もそれをやらないから、もう自分たち(一般市民)がやるしかないと思うのだ。
 大人が子ども虐待に無関心だったからこそ、親に殺されたり、精神病に追いつめられたり、自殺してしまう子がいる現実をずっと放置してきたんだから。
 僕は、大人としてその点をまじめに反省したい。

27年間も増え続けるだけの数字を見て、あなたは何も思わない?

 そこで今年は、運営マニュアルFAQをネット上で配布し、赤字の際はすべて僕個人が一人で引き受けることを明記した。
 今年の秋冬は、全国8か所の主催者から「子ども虐待防止策」のイベント開催のオファーを受け取った。
 1か所の赤字が最大5万円と見積もれば、総額40万円の赤字を僕が請け負うわけだ。

 もちろん、この5万円には、千葉から現地まで往復する講演者の僕の交通費や宿泊費、現地での飲食費、資料プリント代などは含まれていない。
 そこで今年はまず、僕の個人負担も経費に算入することにし、これを最大5万円と見込んだ。
 8か所で40万円だから、主催者グループの経費と足せば、総経費は80万円に上る(=1か所10万円相当)。

 もっとも、赤字を出さないように、寄付と入場料収入の2本立てで経費を賄ってほしいことを、各地の主催者に伝えてある。
 それでも、前述したように、イベントの主催者にはイベント運営未経験かつ精神科に通う人たちも珍しくない。
 当然、赤字を補填できる仕組みが必要だ。



 たとえば、岡山で赤字になっても、東京で黒字にしようと努力すれば、8か所のトータルではプラスマイナスゼロに持ち込めるかもしれない。

 しかし、昨年のようにどの日程も快晴で、中止せざるを得ない天災もなく、すべて順調にいくのは奇跡的なことだし、そもそも僕の機会損失による減収などのコストは考慮すれば、僕個人はプラマイゼロどころか、最初から大赤字なのだ。
(※今年は8か所なので、講演原稿を書く手間は24日間。20万円程度の減収になる)

 だから、万が一、水害や雪害、地震などでイベント中止になった(=入場料収入がパーになった)時や、あるいは結果的に各地のスタッフが寄付や入場料の収入が思うように得られなかった時に備えて、1回5万円を想定経費に足すことにしたのだ。

◎現地スタッフのコスト:5万円
◎今一生の往復交通費・宿泊費・飲食費・プリント資料代:5万円
◎損失補填:5万円

 1本15万円の予算を作れるなら、なんとか安心してトントンにできるはずだ。
 実際は、13万円~16万円と各地の主催者によって額面は微妙に異なるが、万が一、大幅な黒字が出たら、一定額面以上の余剰金は開催地の地元の自立援助ホームもしくは児童養護施設へ寄付するよう、運営マニュアルに書いておいた。

 たとえば、僕の住む千葉から鳥取県の米子市の会場まで往復すると、新幹線を使ってもLCCを使っても、8~9万円かかる。
 この時点で、僕に割り当てられた経費の5万円を3~4万円ほど超えてしまって赤字だ。

 なので、少しでもコストカットしようと、僕は宿泊先も3000円のゲストハウスを予約済みだし、帰りの便だけは広島から深夜便の高速バスも予約し、赤字を1万円程度に抑えるようにした。

 鳥取の主催者グループは、すべての経費をクラウドファンディングネット上からの寄付で調達し、「当日の入場料を全員無料にする!」と発表し、背水の陣でがんばってる。
 どんなイベントも、「入場無料」にするには、陰でスタッフたちが涙ぐましい努力をしているのだ。
(※鳥取の主催者によるクラウドファンディングはこちら。寄付はコチラ

 だが、15万円の経費の満額を当日までに調達できなければ、その不足分と既にある赤字1万円を加えた額面を、他の開催地で黒字にして埋め合わせることになる。

 以上でおわかりのように、僕への「謝礼」(※交通費・宿泊費を含む)という説明は、正確には誤りで、赤字補填分の担保に相当する5万円を含んだ10万円なのだ。
(※寄付+入場料だけで総経費を賄う場合は、寄付の労力を鑑みて9万円にしている)

 これだけ細かい説明をしないとわかりにくいので、便宜上、「謝礼」という言葉を使っているにすぎない。

 もっとも、イベント運営には金がかかることにピンとこない人は、僕だけが利益を得て他のスタッフが全員ボランティアであるかのような勘違いをするだろう。
 でも、これだけわかりやすく内情を書けば、僕自身がそもそも減収を補填できないまま、どこかの開催地の赤字を別の開催地で黒字にすることによって、綱渡りのように赤字を最小化するように努めていることも理解できたはず。

 月収を保証された勤め人の方が片手間にボランティアをするのとは、わけが違うんだよ。

 僕は毎日、8か所の開催地のスタッフとLINEのグループチャットで運営の相談に乗り、各地のイベント応援ブログを書いてはネット上で拡散し、開催地の地元メディアにプレスリリースを送り、その間に「友人がDV男に監禁されてる。助けて!」とか、「近所の中学生が虐待されてる。どうしよう…」という飛び込みの相談に無償で回答し、無料で読めるnoteの『21世紀版・完全家出マニュアル』の下原稿を執筆し、その上で次に出す新刊本2冊の原稿をせっせと書いては、8本の講演原稿を準備してるんだ。

 いつ寝たらいい?(笑)

 いったい、こんな苦労をなぜ、僕や開催地の一般市民のスタッフたちは負うのか?
 それは、前述の統計データを見れば、明らかだろう。
 従来の防止策では、虐待の相談件数を27年間も減らせなかったからだ。

 これまで続けてきた防止策の失敗を素直に認め、根本的に変えなければ、親に殺される子、心を病む子、自殺する子は、今後も増え続けるだけ。
 だからこそ、新しい発想で子ども虐待防止策を考え、生み出す集まりが必要なんだよ。

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